新学期が始まってから半月がたち、新入生もそれとなく大学生活に慣れてキャンパス内もやっと落ち着いてきました。
授業も2週目となりました。春学期は調理学実習を担当していますので、先週の金曜日に第一回目の調理の実習を行いました。 献立は『白飯、豆腐とえのき茸の味噌汁、鯖の味噌煮、ほうれん草と椎茸のごま和え』と、基本中の基本メニューでした。
【白飯】の説明では、米のとぎ方、浸漬時間、鍋での炊飯の仕方、蒸らしの目的などについて話をしました。その時、ふと、このブログを始めるに当たって他の方のブログを拝見した折、西田信子先生の『米はザルで研ぐ?』というのを目にしたことを思い出しました。
通常、大学(?)の調理学実習では、西田先生のおっしゃるような洗米方法を指導しています。
すなわち、
①最初はボールに水を張り米を入れて軽くかき混ぜ、素早くザルにとり水切りを行う。(最初の研ぎ水には米の表面についている糠の粉が混ざり糠臭があるので、できるだけ米に給水させないため)
②その後、2、3回同じ操作を行う。
ザルの中でで洗っていた学生さんは、水切りで使ったザルを洗米時にもボールに入れ替えないで使っていたと勘違いされたのではないでしょうか。ザルの中で米を洗うのは、余り聞いたことがありません。勿論、水切りするときは確かに素早くできるので、便利ではありますが、米は傷がついたり崩れたりしますね。
洗米時に米をゴシゴシ洗うのは、40年以上前の方法ではないのでしょうか。 昔の精米機での処理では、米の表面に多くの糠がついていたり、搗き方が粗かったりということで、お釜の中でゴシゴシと研いだのでは。
小さい頃、田舎の祖母が、確かにギュギュと研いでいた記憶があります。
電気炊飯器などを用いる現在は、炊飯器の内釜の中で洗米する人もいますが、ゴシゴシ洗わなくても内釜に傷がつくことがあるので、お勧めできません。やはり、ボールで洗米するのがよいでしょう。
今では無洗米まであります。 米を主食として、米の味に敏感な日本人。おいしいご飯を食するために、その時代時代に合った方法で、色々対応してきているのでしょう。
美味しいご飯の炊飯繋がりで、電気炊飯器のお話をします。
電気やガスの自動炊飯器の発明は、ほとんど毎日ご飯を食べる日本人にとって大変有用な、物凄い発明でした。
25年程前、中国の学生が初めて日本に留学してきた時代に、年に1回春節の時期に中国の故郷に帰る時、多くの留学生が親や親戚に電気炊飯器をお土産に持って帰っていました。
20年程前、カリフォルニアに留学していた時には、韓国系の電気屋さんで、当時日本出普及していた電気炊飯器の3世代程前の炊飯器がお店に並んでいて、結構、日本人以外のお米を食べる人達にも人気でした。
最初に実用的な電気炊飯器を発明したのは、東京の町工場とのことです。
その後、1955年頃、東芝が自動式電気釜という名で、バイメタル技術を利用し、いったん電源ONにすれば、あとは自動的に電源がOFFになる炊飯器を開発し、さらに、自動的に電源ONになるタイマーを組み込み、いったんタイマーを設定すると、夜スイッチを入れると、朝炊き上がっているというように全自動化されて大ヒット商品となったようです。
1956年に松下電器は、鍋と釜を二層構造の自動炊飯器を製品化し、一時期売られていましたが、炊飯に時間がかかることや消費電力が大きい欠点があり、1960年代以降は見かけなくなりました。
炊飯器ではないのですが、1965年に象印マホービンが半導体による電子制御の保温機能を備えた電子ジャーを発売し、大ヒット商品となりましたが、これも、1967年に三菱電機が保温機能を備えた炊飯器を発売した頃から、だんだん使われなくなってきました。
1980年代に入るとマイコン制御を取り入れる機種が登場して多機能化が進み、2つのタイマー設定ができ、1990年にはマイコンにより好みの炊き加減の選択、玄米や麦飯など様々な食品が調理できたり、蒸し器としても利用できたりする機種が製造されました。
今は、IH(Induction Heating)方式を採用し、様々な設定を組み合わせて加熱を細かく制御して、よりおいしいご飯が炊けるような工夫をしたもの、圧力釜仕様で1.2~1.7気圧程度(家庭用は法規制で1.4気圧程度迄)の圧力がかかるようにして沸点を100℃より高くしたもの、スチーム加熱のものなど色々な機種があります。
2000年代になると、内釜に金属以外の素材を使用し、遠赤外線の作用などによって、ご飯の風味が良くなることを特徴としたものもあります。
このように炊飯器もどんどん進化してきましたが、炊飯が完了すると自動的にスイッチが切れるという原理は変わりがありません。
私の所属する管理栄養学科に在籍している学生は、周囲の人が調理・食品・栄養などの専門を勉強していると思い、「どうして電気炊飯器はご飯が炊きあがると自動でスイッチが切れるの?」と、質問をされるようです。この時期、「質問があるのですがーーー」と、例年、一年生が研究室を訪ねてきます。
なぜ、自動的にスイッチがOFFになるのでしょうか?
ちょっと難しくなりますが、炊飯器には酸化鉄を主原料としバリウムやストロンチウムなどを加えて焼き固めたフェライトという化合物が、自動的にスイッチがOFFにするために使われています。
一般にフェライト(感温フェライト)は、常温では磁石に吸着する強磁性体の性質を持っていますが、 温度上昇とともに、磁石に吸着しない常磁性体となります。これは結晶の磁気的構造がある温度を境と して急変するためで、この温度のことをキュリー温度(キュリー点)といいます。
電気炊飯器のスイッチを入れるとヒータの温度は高まり、やがて釜の中の水は沸騰 しますが、炊飯中の釜底の温度は100℃を少し超えるぐらいでほぼ一定に保たれます。
これ はヒータからの熱エネルギーは米に吸収されて、デンプンのアルファ化に使われるか らです。
この状態が20~30分間続くと、米の内部における熱エネルギーの消費も終わ りを告げ、釜底の温度は急激に上昇し始めます。
炊飯器には、140~150℃をキュリー温度とな るように材料組成を設計した感温フェライトが用いられています。
このた め、フェライトは炊飯中は強磁性体として磁石に吸着していますが、炊飯が完了し、釜底が急上昇すると常磁性体となって磁石に吸着しなくなり、バネに引っ張られている磁石は、フ ェライトから離れてスイッチが自動的に切れることになります。
電気炊飯器には、その後、感温リードスイッチという、スイッチ機能をもつ温度セ ンサも使われるようになりました。
これも磁石と感温フェライトを組み合わせたもので、この感温リードセンサとICとを組み合わせたのが、マイコン制御電 気炊飯器です。
単純に炊き上げるだけでなく、硬め柔らかめ、白米や玄米といった米 の種類、おこわやおかゆといった炊き方の違いなどに応じて、適切な加熱が行われる ようになりました。
このように炊飯器は次々に進化し、私たちは失敗しないで美味しいご飯を作ることが出来るようになりましたが、最初に行う米の研ぎ方までは自動化されていません。無洗米を使う以外は。
皆様は、どのようにお米をといでいらっしゃるのでしょうか?
ちょっと見直してみませんか?

