新年 おめでとうございます。今年も食育ブログのご愛読をお願いします。お正月ですから、お酒と健康に関する話をします。

 酒は百薬の長といわれているが、過ぎれば百害がある。アルコール度の強い蒸留酒などを大量に飲み続ければほとんどの臓器に障害が起きる。よく知られているものは、脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変、高血圧症、肝癌、などであり、アルコール依存症にもなる。

 しかし、適量を飲めば、血液中の善玉コレステロールの増加、一過的な末梢血管の拡張による血圧降下、血流の循環促進の効果があり、虚血性心疾患の予防に効果がある。酒を飲むとアルコールが血流により脳に運ばれて、大脳新皮質を麻痺させ理性や判断を抑制し、一方で本能や感情をつかさどる大脳旧皮質を興奮させるので「酔い」が発生する。だから、精神状態が高揚して、ストレスが発散されるのである。

 数万人の人を対象にして、酒をまったく飲まないグループ、適量に飲むグループ、大量に飲むグループに分けて疾病罹患率や死亡率を十数年間追跡調査する疫学研究が各国で何回も行われた。その結果によると、適量に飲むグループがまったく飲まないグループ、大量に飲むグループに比べて疾病の罹患率がもっとも低いのである。

 通常のアルコール代謝能があるる日本人男性ならば、1日あたりの飲酒の適量はアルコール換算で20グラムである。ビールなら500ミリリットルの缶ひとつ、日本酒ならば1合、ワインならグラスに2杯、焼酎ならお湯割り1合である。この程度のアルコールは肝臓で3時間以内に分解されるから、休肝日を設ける必要はない。個人差があるから、この2倍を飲んでもよいが、3倍、5倍を飲み続けるのは止めてほしい。

 十数年前、赤ワインはポリフェノールの含量が多く、コレステロールの酸化を防ぐから健康によいという論文が出たことがあるが、これは疫学調査により確かめたことではないから信用できない。また、ビールを飲むと肥る、プリン体が多いから痛風なりやすいというのも誤解である。適量で比較すれば、ビール、日本酒、ワインはどれでも約200キロカロリーである。また、ビールのプリン体は500ミリリットルに40ミリグラムあるが、納豆1パックには57ミリグラム、アジ干物、60グラムには148ミリグラムもある。  

 お酒の飲み方も大きく変わった。日本人は神代の時代からずっと米から造る日本酒を飲んできた。ビール、ウイスキー、ワインなどの消費が増加し始めたのは戦後のことである。ことに、ビールの躍進は目覚しく、日本酒の消費を追い越して、平成6年には生産量が719万キロリットルのピークに達した。平成20年には発泡酒、第3のビールを合わせて613万キロリットル、容量で比較すると酒類全体の67%を占めている。これに対して、日本酒は消費が低落し続け、65万キロリットル、酒類全体の7%を占めるに過ぎなくなった。

 これ以外では、ウイスキーが一時、水割りで人気があったが、今では酒全体の1%弱、ワインの消費は少しずつ伸びているもののまだ3%弱、近年では焼酎の消費が増えて11%になっている。

 ビール、発泡酒、第三のビールの合計消費量は一人当たり年間で48リットル、350ミリリットル缶なら138缶である。成人男性ならこの2倍は飲んでいるだろう。このように外来のビールが短期間のうちに民族伝統の酒である日本酒にとって代わるという現象は西欧諸国ではかつて見られなかった現象である。食事の内容が急速に欧米風になったためであるが、ビールは茹でた枝豆やピーナツなどで手軽に飲める簡便さがあり、食卓を離れても風呂上りやテレビを見ながら、あるいはアウトドアでも飲めるなど、私たちのお酒の楽しみ方が変化したからでもある。

 一人当たりの酒類消費量をアルコールに換算してみると、最近は年間、6リットル前後である。10リットル以上を飲んでいる欧米人に比べれば少ないように見えるが、日本人には遺伝体質的に酒が飲めない、あるいは酒に弱い人が4割近くいることを考えると、これで十分なのである。

 1世帯あたりの酒類購入金額は一月3800円であるから、家計費の1%強に過ぎない。 酒類の半分は家庭で飲まれている。ビールであれば8割が家庭で消費されている。庶民が家庭で酒を飲みたいだけ飲めるようになったのは日本の飲酒史上、初めてのことである。戦前までは、冠婚葬祭など特別の日にしか飲めなかったのである。ついでながら、最近の若者は酒を飲まなくなった。習慣的に酒を飲む若者は1割ほどであり、、中高年層に比べると半分以下である。その理由としては、ケータイやメールの普及で若者の人間関係が広く、浅くなり、酒を飲んでコミュニケーションを深めようとしなくなったことがあげられよう。

 

 30年ほど前までは、お茶や紅茶は家庭でお湯を沸かして淹れるものであり、買ってくるものではなかった。ところが今は駅の売店、街角のコンビニや自販機に缶やペットボトルに詰めた「飲み物」が溢れている。

 コーラやサイダーなどの炭酸飲料、オレンジやリンゴなどの果実ジュースと果汁入り飲料、缶コーヒ、緑茶、紅茶、ウーロン茶などのお茶飲料、トマトジュース、野菜ジュース、スポーツドリンク、ミネラルウオーターなど多彩な飲み物の総生産量は年間1700万キロリットルを超えている。500ミリリットルのペットボトル製品にすれば340億瓶になるから、私たちは年間に270壜を飲んでいることになる。これら飲料の総販売金額は4兆円に近く、約34兆円といわれる加工食品の12%にもなる。

 これらの清涼飲料、あるいは嗜好性飲料は生きるためにぜひ必要というものではない。食べ物に不足がなくなり、食生活に余裕ができて初めて楽しむものである。戦前にはサイダーとカルピスぐらいしかなかったことを考えると、これほどまでに新しい飲料が増えたことは私たちの食生活の充実ぶりを如実に示している。

 これらの飲料の中で圧倒的に人気のあるのが緑茶、ウーロン茶などのお茶飲料である。昭和50年代に初めて登場してから右肩上がりに急成長し続け、今や飲料市場の3分の1、550万キロリットルを占める大ヒット商品である。登場した当時は、お湯を注げば手軽に飲める緑茶、ウーロン茶、紅茶などをボトルに詰めて売り出しても買う人はないだろうと考えられていた。ところが、添加物なしの天然飲料であるという強みもあるが、何よりも外出先で手軽にお茶が飲め、しかも持ち歩けるという便利さが受けたのである。

 コンビニのおにぎりやお茶飲料は「もったいない」よりも簡便、便利を追い求める現代の食生活の申し子であるといってよい。

インスタント食品の傑作三役はカップ麺、レトルトカレー、そして即席味噌汁である。

 今や国民食になったラーメンは昭和30年代までは中華そばと呼ばれていた。最初に中華そばを考案して売り出したのは明治43年、東京、浅草の「来来軒らしい。その中華そばがラーメンという名前に代わったのは昭和33年、、日清食品がインスタントの「チキンラーメン]を発売してからである。

 インスタントラーメンは最初、麺を油で揚げ、直接に味をつけたものであったが、後にスープは別に添えられるようになった。昭和46年、湯を注ぐだけで食べられるカップヌードルが発売されて急速に普及した。外国人に聞くと日本食の1~3位はすし、ラーメン、天ぷらだそうである。袋入りも含めて即席麺は世界中で954億食も食べられているから、70億人が年間14食食べる世界食になっている。日本人は一人当たり40食ほど食べている。

 明治初年、イギリス料理として紹介されたカレーは大正時代にカレーライスに姿を変えて普及した。今や日本人は年間84回、カレーを食べるというから4日に1度である。昭和43年、大塚食品が開発した[ボンカレー]はレトルト食品の第1号である。ボンカレーのボンはフランス語でおいしいという意味であるが、レトルトカレーは文字通りおいしくなり、ご当地名物カレーを集めて食べさせる店もあると聞く。レトルトカレーの市場規模は約450億円、一袋250円とすると、1.6億食、一人1食ほどになる。1食分を200キロカロリーに抑えた女性向商品も開発されている。

 即席味噌汁が登場したのは昭和50年である。最初は味噌を熱風乾燥した粉末タイプであったが、やがて凍結乾燥したものに代わり、さらに昭和60年代に生味噌タイプに代わってさらにおいしくなった。今や母ちゃんの作る味噌汁よりおいしいというので、年間の売り上げは460億円、1杯分が30円であるから15億杯、一人当たり10杯は飲んでいる。生味噌そのものの出荷額は減り、即席味噌汁が増えている時代である。家庭用だけではなく、職場でも行楽の場でも利用されていて、最近では20%減塩タイプも登場している。 

 豊かで、便利になった日本の食の世界を牽引してきたのは、食品会社が次々と開発した便利な加工食品である。食品工業は昭和40年ごろまでは出荷額が5兆円規模であったが、その後、急成長して製造工場が4万、従業員が126万人、出荷額が34兆円に増加し、自動車工業に次ぐ製造業に発展している。

 食品工業が製造している加工食品を分類してみると、小麦粉、調理油、砂糖など従来からの素材型加工食品は10%、缶詰、塩干物など保存用加工食品は30%である。急増化したのは、飲料、調味料、パン、菓子、冷凍食品、即席食品、惣菜などの直接消費型の加工食品である。

 戦後に開発された新しい飲料や即席食品がいかに私たちの食生活を便利にしたのか、ヒット商品を年代順にたどってみればよくわかる。

昭和20年代      バヤリース・オレンジジュース、 トリスウイスキー、ポテトチップス、魚肉ソーセージ、トマトジュース(カゴメ)、粉末ジュース、お茶漬けのり(永谷園)

昭和30年代      ママスパゲティー(日清製粉)、チキンラーメン(日清食品)、インスタントコーヒ ネスカフェー(ネッスル)、ハウス印度カレールー、クノールスープ(味の素)、即席味噌汁、かっぱえびせん(カルビー)

昭和40年代      カップヌードル(日清食品)、マーボー豆腐の素(丸美屋)、エバラ焼肉のたれ、レトルト ボンカレー(大塚食品)、UCC缶コーヒ、レトルト米飯、

昭和50年代      パック入り鰹節、LL牛乳、スジャータ(名酪)、豆乳(紀文)、ポカリスエット(大塚製薬)、おーいお茶(伊藤園)、午後の紅茶(キリンビール)、スーパードライ(アサヒビール)、スタミナドリンク ファイブミニ

平成年代       無洗米、冷凍米飯、グミキャンデー、こんにゃくゼリー、さくさくコロッケ(ニチレイ) 発泡酒(サントリー、・・・・・・・