第62話 全頭検査の是非を考える

 狂牛病騒動は発生以来10年を経て、全頭検査で安全になったと思われているが、問題は残っている。実は狂牛病(BSE)に感染しているかどうかを検査する全頭検査に当初から疑問があった。生後20か月までの若い牛では(肉牛の大部分は23カ月ぐらいで食肉にする)感染しても異常プリオンが直ちに脳に蓄積するわけではないので、脳髄を抜き取って検査しても感染の有無を正確に判断できないからである。

 だとすれば、最近の数年では狂牛病の発症牛が途絶えているのだから、検査結果が確実でない全頭検査は省略して、念のため異常プリオンが蓄積しやすい脳や脊髄などの危険部位を除去しておくだけで安全と考えてよい。毎年125万頭を検査する費用は16億円にもなるので政府は全頭検査を中止したいのだが、地方自治体や外食業界が継続を希望するので中止に踏み切れていない。

 食品安全委員会の専門家は、運悪く感染牛の肉を食べ、さらに運悪くクロイツフェルト・ヤコブ病を発症する人は国内人口1億2700万人に1人あるか、ないかであり、汚染危険部位を除去しおけばさらに減って0。004人になると発表している。これで十分すぎるほど安全なのではないだろうか。国際獣疫事務局も、危険部位を除去しておけば牛の月年齢に関係なく検査は必要でないと判断している。アメリカでも、EU諸国でも食肉にされる牛の全頭検査は実施していないのに、日本だけが10年間も継続実施している。

 福島原発事故の影響で基準値以上の放射性セシウムに汚染されている牛肉が発見された。福島県は県産牛肉を全面出荷停止にするかわりに、県産牛の全頭検査を実施する方針であるが、検査態勢が整わない。食肉牛の全頭検査がこのような形で再登場するとは全く想定外のことである。

 放射能汚染した食品による体内被曝が起こす健康被害は、専門家にも未知の領域である。厚生省が定めた暫定基準値、牛肉1キログラム500ベクレルを超える3400ベクレルの汚染牛肉を、毎日200グラムずつ毎日食べ続けても年間許容被曝量、5ミリシーベルトを超えない。したがって、健康に影響するとは考えにくいのであるが、このような説明では消費者の不安は静まらない。BSE騒動の時と同じように、汚染の実態が判明し、それによる健康リスクの大きさが推定できるまでは全頭検査は避けられないだろう。

 しかし、BSE,放射能汚染のどちらのケースについても、汚染の実態が把握できて全頭検査が当初の役目を終えるか、あるいは汚染による健康リスクが科学的に解明されて、検査を継続する意味が薄れたと判断できれば、直ちに中止する勇気を行政当局と消費者の双方に求めたい。国家財政がひっ迫している折から、無用(?)の社会コストは極力節約しなければならない。

 

 

 

コメント(12)

放射性セシウムに汚染されている牛が世に出回っている事を伝えるのも良いですが、ここまで広まっていれば、食べた後の事をもっと積極的に伝えて欲しいと思います。素人の私達では、毎日200g食べても年間許容被ばく量を越えないとか、分かりませんし。
不安を煽るだけではなく、もう少し、対策やこれからをどうするのかという部分を広めて欲しいです。

安心・安全を手に入れるために、こんなにも莫大な費用がかかっているのですね。
なんでも過剰に反応し、気にしすぎる方が多いような気がします。
マスコミの情報だけに踊らされないようにしたいです。

マスコミ等で、「汚染牛」という
いかにも危険で汚いですという印象を持つ表現がされていることに疑問を感じます。
そういったところから風評被害が根づき
消費者の不安が積もっているのではないかと思います。

年間16億円もかかるということに驚きました。
また今後生産者の方々の生活保障等もありますので
さらに莫大な費用がかかるでしょうね。

放射性セシウム問題があり、
この流れで検査項目が
増える形になりますね。

今まで通りの検査で年間16億円、
さらに項目を増やすと
いくらになるのでしょうね。
でも、風評被害を抑えるには
有効な一手なので、検査は賛成です。

簡素で安価な検査方法があればいいのに、、、
と思います。

今回、牛が放射能を含む稲わらを食べてその肉が市場に出回り、消費者が食べてしまった件は少し過剰反応のような気がします。

たとえ食べていたとしても人体への影響は低いと思われます。
少し、冷静な対応をすべきではないでしょうか。

調べればよい、調べないからいけない。というわけではないのですね。

不安が不安を呼んでいますよね。
本当は気にもしていないのに、にわかファンではないですけど、にわか心配性の方がニュースに煽られて急増しているなと感じます。

メディアもいたずらに国民を煽るような報道はやめていただきたいですね。

費用に16億円かかるとは知りませんでした。
確率をみるとかなり安全に思うのですが、こういう情報はマスコミ等からは発信されないので、世間的には安全という認識は全くないですね。

安全かどうかは、しっかり説明して頂ければ、理解できると思います。
しかし、安心は説明する人を信じるか信じないかにかかっていると思います。
こう考えると,今のご時世で全頭検査を廃止するのは難しいでしょうね。

BSEに関しては、そこまで確率が低いのであればある程度簡略化しても問題はなさそうですね。
放射能は直ちに影響がないならば、一体いつどんな影響があるのかがわからなければ不安でしょうがないですね。
いつまでかかるかはわかりませんがきちんと科学的に安全性が証明されることを望みます。

食品安全委員会の専門家の数字には
疑問視しなければならない部分がありますね。
イギリスで113人の患者を出した事が統計的な数字で
過小評価されていると思われます。
同様に、放射能汚染の牛肉についても
内部被曝になるため、一般の年間許容量50mSvを
基準にはできませんし、子供ではもっと危険です。
ことさらに騒ぎ過ぎるのは確かに問題ですが
実際の被害実態がつかみきれないのに
安全と言い切る事も危険です。
とくに、放射能に関しては
「すぐに健康被害はでません。」が当たり前で、
時間をかけて被害が出るものです。

狂牛病の検査で16億円もの費用がかかっているとは知りませんでした。
十分すぎるほど安全なのに、口にする食べ物だから不安なんでしょうね。
私は東北産・北関東のお野菜等、積極的に食べています。

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