農水省は食料自給率を2015年までに45%に回復させるために、輸入に依存している小麦、大豆、飼料作物を国内で増産するよう農家に補助金を出している。しかし、2000年から10年間、累計、7兆円もの補助金を出してきたにもかかわらず増産できたのはわずかで、食料自給率は40%から回復する兆しがない。第6話で自給できる野菜まで輸入するのはやめようと提案したが、相変わらず輸入は止まらない。
この原因は日本の農産物は生産コストが海外より数倍も高いからである。 小麦の生産コストは1ヘクタールで60万円かかるが、収穫した小麦は6万円にしか売れない。日本の農家は耕作面積が狭いので効率が悪く、おまけに労働賃金が高いからである。
米作りで比較してみるとよく分かる。日本の農家の平均作付面積は1ヘクタールと狭いので効率よく機械化できないが、アメリカでは平均114ヘクタールの大規模農業であるから徹底的に機械化されている。だから、米1トン当たりの生産費は日本では21万円であるが、アメリカでは10分の1の2万円で済む。タイの農家の水田は平均5ヘクタールであり、アメリカほどには広くなく、機械化されてもいないが、賃金が安いので米1トンが1.3万円で生産できる。日本では水田を借り集め50ヘクタールにして栽培しても、この大きな内外価格差は半分ほどにしか縮小しない。
米の輸入が完全に自由化され、海外から安い米が流入してくると、日本の米作り農家は対抗できない。安い輸入米に押されて米の自給率が50%にでもなったら、総合食料自給率は29%に下がると心配されている。小麦や乳製品についても同じことである。農水省が机上で計画しているように国内生産量を増やして食料自給率を回復させることは極めて難しい。消費者の協力が必要なのである。

