パンの話25 (酢酸ガス処理小麦粉によるパン−7)


酢酸ガス処理による製パン性の改良について、そのメカニズムの研究を林真知子氏は続けました。

どうも小麦粉の酢酸ガス処理でパンが良く膨れるようになるという事、即ち製パン性(パン高, mm、比容積, cm3/g)の上昇するメカニズムには2つのポイントがあるようでした。

その一つはイーストに与える酢酸の影響であり、殺菌効果の強い酢酸でも極めて低濃度の場合にはイーストをむしろ活性化し、イーストは炭酸ガスを盛んに出すようになるという事です。

この性質は他の有機酸にはなく、いろいろ調べた範囲では酢酸のみのようでした。しかしこの結果は小さな日本の雑誌に邦文で発表し、そのうちその雑誌は消えてしまいました(廃刊)。論文は英文で、しっかりした雑誌に出さないとこのような悲劇となります。

酢酸の低解離度が原因で、酢酸は水中で余りイオン化しない事が原因のようでした。

従ってイオン化が低いために酢酸分子は菌体の中に入りやすいのではないだろうかと思ってます。イオン化していれば、そのチャージでイースト菌体表面にベタベタと結合して、なかなか内部にまで入らないのではないだろうかという事です。

菌体の内部に酢酸分子がそのまま入り込んでも、弱濃度ではむしろイーストの機能を活性化し、高濃度では菌体の機能を抑えるために死に至るのでしょう。

夏場になると、大腸菌0157食中毒菌等の有害菌を抑えるため、調理士さんは、布巾にお酢を染ませて、まな板などを拭いて殺菌すると言いますが、それなども酢酸の殺菌力をうまく利用した方法で、やはり酢酸の解離度が低く菌体中にどんどん酢酸分子が入り込んでゆく事の利用と思います。

さてこのイーストへの酢酸の効果とともに、一方では小麦粉ドウへの酢酸の効果のある事も、前回の話の中にありました。

即ち、酢酸ガス処理した小麦粉は、ドウの物性が多少変化して、イーストの出すガスをうまくチャッキアップする事が出来るようになるという事です。このため製パン性が上昇しました。


パンドウを長いプラスチックの筒の中に入れて、そのまま加温すると、ドウ中のイーストがガス発生し、円筒中でドウは縦方向にどんどん伸びてゆきます。このスピードの早さ、最終到達長は酢酸ガス処理した小麦粉のものが大きく、それはパンの良い膨化に一致しました。

即ちドウの伸張性は酢酸ガス処理で生じてくるということです。この件について以下詳細にお話しします。

つづく

コメント(11)

論文が廃版なんてあるのですね。卒論ですらあれだけ大変だったのに、せっかく書いた論文がなくなってしまうのは悲しいですね。

やはりここでも、
ポイントは酢酸なのでしょうか。

せっかくの論文、
廃刊になってしまっているなんて、
残念です。

伸張性は焼きあがりには
もっちっりとするのですか?

食べ比べてみたいです。

研究を続けること、成功させることも重要ですが、それをどのように発信していくかも重要なのですね。
英語の論文はぜんぜん読む気がしませんでした。
でも、必須なんですね。

せっかく発表した論文の雑誌が廃刊になるとは、本当に悲しいですね。

ですが、普通の方であればなかなか論文など発表し雑誌になる機会はないので、邦文でも英文でも素晴らしいですね。

酸は良い働きをすることもあればそうではないこともありますね。
うまく使い分けることが大事ですね。

やはり多少の毒は
菌でも活性化になるのですね
あまり、環境が良好すぎるのは
実は良くない事のようですね。

製パン性はよくなるようですが、酢酸とイースト菌は、
相性が良くないような気がします。
相性が悪い結果、活性化(暴れている)ような気がする
のですが。

お酢は、殺菌や汚れ落としに使ったりしますね。
普段の生活に結びついていると
難しい研究でもちょっと身近に感じられます。

酢酸ひとつとっても、いろいろな角度で効果を発見できるのですね。

やはり英語ができなければ厳しい世界なんですね…

大学時代、英語の論文ばかり読まされ、
英語が苦手な私は、
全部日本語で書いてくれればいいのに
と何度も思いました。

読みたい論文を読むためにも、
残すためにも、英語は必須なんだと再確認しました。

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